情報風景インスティテュート

純粋キーボード批判に基づく

武士のキーボード ®

武士のキーボード

本図案は、商標権および意匠権で保護されています。


現在普及しているキーボードは、
1990年代初頭に日本IBMが世に出した
「OADG標準キーボード 5576-A01型鍵盤」が
原型になっています。PC黎明期の、不朽不滅の名作です。

あれから三十年の時が移りましたが、
当時は意味のあったキーがそのまま温存される一方で、
ノートPCの普及に伴いショートカット用のキーが追加されたりして、
キーボードがやや面倒なことになって来ています。

そこで「純粋キーボード批判」を試み、得られた近似解が
上図です。理想のキー配列に近付いたように思います。
日本人の日本人によるキーボードゆえに、
「武士のキーボード」と名付けました。


武士のキーボードは、情報風景インスティテュート株式会社の登録商標です。
Last Updated: 2022-07-03

よくある疑問(解説)


・なにをいまさらキーボード
・キーボード ≦ マウス
・一番売れたものにしたがう
・批判の精神と少しばかりの勇気で
・方向指示機とワイパー
・文字入力の方式を限定します
・中途半端な[半角/全角]キー
・日本人の日本人によるキーボード
・洗練の結果と補足
・補遺:半角文字について

なにをいまさらキーボード

もはやPCなくして仕事になりません。PCの入出力装置として、キーボードとマウス、そしてディスプレイモニターがあります。

マウスは高度に完成したデバイスです。改良すべき点はなにもありません。ディスプレイモニターはブラウン管から液晶パネルに変わり、重さも奥行きも劇的に小さくなり、画面は広くなりました。

マウスとディスプレイモニターは、ともにPCの入出力装置として洗練された域に達しています。ところがキーボードだけは、いまやとても洗練されたデバイスとはいえません。『純粋キーボード批判』で批判した通りです。

PCを使うということはキーボード、マウス、ディスプレイモニターを使うということにほかなりません。この三つのデバイスのうち残念ながらキーボードは取り残されています。

キーボードを洗練されたデバイスへと導く仕事がここ(目の前)にあります。地道な仕事ですが、決して難解ではなく、ある程度先を見通すことのできる仕事です。やるだけの価値はあります。

キーボード ≦ マウス

OSやソフトウェアは、三つの入出力装置を前提に開発されています。キーボード、マウス、ディスプレイモニターです。キーボードはおもに文字や記号の入力に使い、マウスはソフトウェアの操作に使います。

マウスの操作の代わりに、キーボードを使うことも少なくありません。ショートカットキーです。

ショートカットキーは覚えてしまえば便利なので「増殖」の傾向にあります。現時点で、優に百個は超えています。相互の結果として、キーボードが少しずつではありますが複雑になってきています。

何事も巧みに操れる器用さと記憶力をお持ちの方には、なんでもないことでしょうが、一般人にはこれはなかなかの負担です。一定の「学習」を要求することになるからです。

一方、マウスはシンプルな装置であって、いわゆる「直観的」に操作できます。学習は要求されません。

キーボードもシンプルであってほしいものです。シンプルかつコンパクトで、美しいキーボードです。マウスのように。

キーボードをシンプルにするひとつの道は、たとえば、キーボード本来の機能、すなわち、文字と記号の入力と必要最小限の編集機能に限定し、それ以外のキーを消去することです。マウスに任すことです。具体的には本編で述べた通りです。

一番売れたものにしたがう

今日のキーボードの原型は、19世紀末に米国のレミントン社が実用化したタイプライターです。全米にタイプライター学校を作り、タイピストという職業が生まれました。キーの配列は「qwerty」ですが、この配列は、そのまま今日のキーボードに引き継がれています。

「qwerty」配列以外にも様々なキー配列が開発されましたが、結局、「qwerty」配列が事実上の標準として、足掛け3世紀にもわたって、君臨するにいたっています。

「qwerty」配列のキーボードで「ローマ字綴りでキー入力し変換し確定する」という形で、日々、日本語入力を行っている我々としては、「qwerty」配列以外のキーボードを使うことはあり得ず、次世代にも「qwerty」配列を継承していくことでしょう。

したがって「qwerty」配列は批判の対象になりませんが、それ以外の、つまり、アルファベット以外の部分は批判の対象になります。その一例を持ち出せば、たとえば[Caps Lock]です。

批判の精神と少しばかりの勇気で

[Caps Lock]は英文において大文字(capital letter)を入力する便宜をはかるキーで、日本語入力で使うことはありません。

[Caps Lock]はキーボードから消去します。消去した後に[Shift Lock]を配置します。まったく新しいキー[Shift Lock]です。

[Caps Lock]はアルファベット文字に作用するのに対し[Shift Lock]は文字と記号のキーに作用します。もちろんアルファベット26文字にも作用しますので[Caps Lock]の機能を含むことになります。

多くの工業製品には規格が定められており、キーボードにも規格があって、[Caps Lock]は「規格に準拠する」かたちで温存されてきました。他にも温存されてきたキーはいくつもあります。

規格に強制力はありませんので、[Caps Lock]を消去し[Shift Lock]に置き換えることに問題はありません。

規格は、従来品(標準品)の大量生産において有用です。しかし、新製品は規格を破壊することから始まります。運が良ければ、それが新標準となり、やがて新規格の制定へと達します。

しかし、何事も「変える」ことには漠然とした不安が伴うものです。ここは、少しばかりの勇気をもって前進してみます。

前進したのち、批判の精神で検証すればいいことです。不安の正体は、取越し苦労であることがほとんどであるばかりか、新しい発見に遭遇することも少なからずあります。

方向指示機とワイパー

[Caps Lock]と[Ctrl]を入れ替えることが、一部のユーザーの間で行われています。動機は明白ですので、真似してみます。しかし意外なことに、これがうまくないのです。

[Ctrl]のかつての位置を指が覚えてしまっていて、指がふらふら迷うのです。いわゆる「慣れ」が邪魔するのです。

長年、国産車を乗り継いできましたが、数年前に欧州車に乗り換えました。国産車では方向指示機(ウィンカー)のレバーがハンドルの右側についています。左側にはワイパーが付いています。欧州車ではこれが逆になっています。左が方向指示機で、右がワイパーです。

たったこれだけの違いに慣れるのにずいぶんと時間がかかりました。いまでも、とっさのときに、方向指示機を出すつもりでワイパーを動かしてしまい、赤面します。

「qwerty」配列が足掛け3世紀にもわたって事実上の標準である理由がここにあります。「慣れ」の問題は決しておろそかにはできません。キーボードを刷新しようとするときは、心して当たらなければなりません。

心して当たるとして、何を判断基準にしたらよいでしょうか。ひとつには、よく使うキーなのか、たまにしか使わないキーか、です。たまにしか使わないキーであれば、批判の対象になり得ます。たとえば右の[Alt]です。

本編の「四国エリアを引き算と足し算で一新」で述べているように、右の[Alt]は消去します。

なお、[Ctrl]の問題には別のアプローチがあります。左右両側の[Ctrl]を内側に広げて[Ctrl]自体の面積を増やすことです。そうすれば、ショートカットキーとの距離を縮めることができます。

文字入力の方式を限定します

ローマ字入力とかな入力がありますが、本批判ではローマ字入力に限定します。

また、入力モードは「ひらがな」「全角カタカナ」「全角英数」「半角カタカナ」「半角英数」の五種類がありますが、「ひらがな」に限定します。

さらに、文字種変換はファンクションキー[F6~F10]を使わず、[Ctrl]+[U][I][O][P](MS-IMEの場合)に限定します。

列記しますと、
 ・ローマ字入力に限定
 ・入力モードは「ひらがな」に限定
 ・文字種変換は[Ctrl]+[U][I][O][P](MS-IMEの場合)に限定
となります。
なお、文字種変換を使うことはあまりありません。

これらの限定はキーボード盤面を洗練する役に立ちます。たとえば、ローマ字入力に限定することで、キートップのひらがなの刻印を消去できます。

また、入力モードや文字種変換の限定から、[無変換][カタカナ/ひらがな][F6~F10]のキーが不要になります。

文字入力の方式はいくつも併存していて、その分のキーの割り当てもあって、やや煩雑になっています。文字入力の方式を限定することで、この面倒な問題を解消することができます。洗練への一歩です。

中途半端な[半角/全角]キー

日本語を入力するには[半角/全角](または[Alt]+[半角/全角])を押すことになっています。これを解除するには、もういちど同じキーを押します。

ここで疑問です。なぜ[半角/全角]なのでしょう。

PCの内部処理において、1バイト文字、2バイト文字の区別があって、1バイト文字は半角文字、2バイト文字は全角文字と呼ばれます。これらは技術用語です。なお、半角、全角という用語は、「半角=1/2」「全角=2/2」から来ています。

英語は半角文字で、日本語は全角文字です。そこで、[半角/全角]によって英語と日本語を切り替えることになっているのです。

日本語は、かな漢字変換システム(IME)を介して入力されます。

ここまでは分かります。問題はありません。ただ、キーに[半角/全角]と表記したのはなぜかという疑問はのこります。[半角/全角]は、どっちつかずの中途半端な用語です。

もっとストレートに[英語/日本語]もしくは[かな漢字変換のオンオフ]は、どうでしょうか。

実際、[E/J](English/Japanese)と表記されたキーボードが市販されています。これは半歩前進ですが、まだ間接的であって直接的ではありません。

日本語の入力は、かな漢字変換システム(IME)を起動することによって行われます。――ここが極めて肝要です。IMEをおもてに出した表記が求められます。それがあとの半歩になります。

[半角/全角]や[E/J]のような中間的で曖昧な用語はユーザーフレンドリーに見えて、実はそうではありません。IMEというPC用語をあえて避けるのは、逆効果でしかありません。いまやIMEは誰でも知っています。

IMEオンオフがもっとも本質的な用語です。よって、[半角/全角]のキーの表記は[IME]に変更します。この変更を超えるような変更は考えられません。冒頭の疑問に対する単純明快な解答です。

日本人の日本人によるキーボード

旧[半角/全角]は遠い位置に孤立して配置されていました。[IME]に表記変更したうえで、キーの位置も変更します。

[IME]は日本語入力において最も重要なキーです。キーボード最下段(一番手前)の押しやすい位置に再配置します。機能が類似したキーはまとめて配置するのが合理的ですから、[変換]の右隣におきます。

キーの面積(横幅)も大きくして、押しやすくします。これでキーボード全体が洗練され、使いやすくなります。

[IME]が押されたときは、キーボード盤面上のインジケーターが点灯、消灯して知らせるようにします。

このように[IME]を明示し、キー配置を改め、キーを大きくし、インジケーターを設置しました。これこそが、英語入力と日本語入力を平等に扱う日本人の日本人によるキーボードです。

洗練の結果と補足

日本語入力するには、入力モードは「ひらがな」に設定しておき、
(1)IMEをオンにし、
(2)ローマ字入力で文字入力し、
(3)変換キーでかな漢字変換し、
(4)[Enter]で確定します。
途中で英語を入力する場合はIMEをオフにしそのまま英語を入力します。

この手順に曖昧なところはなく、単純明快です。地味な変更を少しばかり加えただけですが、それでキーボードが洗練されました。

なお、文字種変換は[Ctrl]+[U][I][O][P]で行いますが、その頻度は低いものです。念のため再録しておきます。

【MS-IMEの場合】
[Ctrl]+[U] ひらがなに変換
[Ctrl]+[I] カタカナに変換
[Ctrl]+[O] 半角に変換
[Ctrl]+[P] 全角英数に変換

「ひらがなに変換」は、そのまま[Enter]で確定、「カタカナに変換」は、特殊な文字列でない限り[変換]し[Enter]で確定します。
「半角に変換」と「全角英数に変換」の使用頻度は低いので、このショートカットキーをそのまま使います。

補遺:半角文字について

IMEオンのときの半角文字について、少し述べておきます。

半角カタカナは、電子メール等では環境依存文字と同様に使用を控えるべき文字種ですが、“全銀システム”(1973年稼働開始)ではいまも使われています。

半角カタカナ以外の日本語で意味があるのは半角スペースだけです。IMEオンのときに半角スペースを入力するには、[Shift]+[Space]です。これが少々煩わしい操作です。

この問題は、独立した半角スペースキーがあれば解決することができます。そこで、[Space]の横に[Half Space]を新設します。これが意外と重宝します。本編中盤で述べています。


                   2022年晩夏
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